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Vol.5 夢を叶えるまでの18年と、お客様の心を掴む売り場への挑戦

Interview・Photo: Fashionsnap.com

 店内案内、販売員、アシスタントバイヤーを経て、2008年より伊勢丹新宿店の自主編集売り場「Re-Style(リ・スタイル)」のバイヤーとして活躍する須藤 有紀子氏。百貨店初の試みとして、新人デザイナーの作品を展示・販売する「解放区」の立ち上げに携わった経験を持ち、現在は、世界中の高感度なブランドをセレクトした「Re-Style」、旬のデザイナーズブランドを集めた「インターナショナルデザイナーズ」のバイイングを一手に担う。
  そんな須藤氏が不況の風を受けつつ“ファッションの伊勢丹” を支える存在として常に挑戦を続け、消費者の心を掴む売り場を創造していくバイヤーならではの視点や仕事の裏側、今後求められる小売業の姿、そしてバイヤーという夢を叶えるまでの18年の軌跡と仕事のスタイルについて伺った。

“顧客起点” に立ったバイイングで心を掴む売り場づくり

 バイヤーとして一番重要に捉えているのは、“リアル” である事。ファッションとは時代を追うものですが、実際に着てもらわないとしかたがないですよね。お客様は、その服をリアルに落とし込んで買っています。様々なお客様のパターンがあって、様々な好みの方々がいる。その売り場ごとのお客様の姿を、自分のフィルターを通して考える、“顧客起点” に基づいたバイイングすることが大事です。私の強みは、販売員の経験が長かった事もあり、お客様の気持ちが分かり、その立場に立った視点を持っている事。それが本当の“リアル” につながります。

  • 2009-10年秋冬コレクション

▲“顧客起点”に基づきバイイングされたアイテムが並ぶ伊勢丹新宿店「INTERNATIONAL DESIGNERS」の売り場。

 ファッションのトレンドには、デザイナー達が打ち出す大きな波と、その中にあるディテールの小さな波があると考えていて、トレンドを発信するのはデザイナー達の役割りで、時代を創るのが使命。バイヤーはそれらを編集する立場だと思っています。大きなトレンドのベースを掴みつつ、小さなディテールの新しさを見逃さないように、そしてデザイナーの思いをつぶさない様に汲み取って、バランスよく編集し組み立てる。そのパーツをセレクトするのがバイヤーの仕事であり、いかに楽しくみせるのかというのが売り場です。そして、顧客のニーズにマッチする商品かどうかという、ビジネス的な観点も必要です。

感性を信じ、チャレンジし続けること

感性を信じ、チャレンジし続けること 特に、新規ブランドを発掘するときは、そのデザイナーの意図が伝わってきて、着る人に対してどれだけの思いを持っているかを見ます。そういったブランドはダイレクトメールからしても、作品ひとつをとっても、もっと見たいと思わせる何かを感じますね。そして「これは新しい!」と思ったら迷わず買い付けます。様々なトレンドや時代を理解した上で、買い付けは数枚のときもあれば、数百枚の時もあります。半年以上先に店頭に並ぶ商品をセレクトするのは掛けのようですが、そこで勝負しないと成長は出来ません。当たった時に初めて喜びがある。負けたときの痛手は大きいですが、勝負しなかったらその土俵にも立てませんから。自分は勝負師のようですね(笑)。

アパレル業界を取り巻く環境の変化から、今後求められる小売業の姿

アパレル業界を取り巻く環境の変化から、今後求められる小売業の姿今、小売業全体がピンチな時だと思ってます。消費不況やファストファッションの流行、EC 化の波も感じつつ、模索している毎日。でも、私たちが提供しているものは「間違いない品質」であり、これは曲げないでやっていこうという核があります。オンラインショッピングだと分からないクオリティ、ファストファッションでは得る事ができ
ない感性や質、そしてデザイナー達の思い。それらを乗せた“本物”を提供し続けることが強みです。

 しかし、不況のあおりを受け、実際にそれを買える顧客層が減ってきているのは事実。本物を持ちたいが、今の景気では買えないというお客様が多く存在するのが現実です。今後の課題としては、そういったお客様にも手に届く“本物” をいかに創造し、支持してもらえるものを提供して行けるか。ファッションには皆、興味があると思っていますし、人を幸せにしますよね。ファッションを通じて何か形にできないか。時代を変えることが出来ないかという考えが常にあります。

 今のブームや経済状況が変わって、自分のクローゼットを見回したとき、そこで“本物” を揃えたいというニーズが必ず出てくるでしょう。お客様のために楽しい売り場を創造し、そのニーズに答え続けて行きたいと思っています。

スペシャリスト 仕事の流儀

“願えば叶う”「こうなりたい、こう変えたいと常に思って行動していれば、 チャンスがきっとやってくる。自然と夢に近づいていくはず」
須藤 有紀子

 伊勢丹に入社して、最初の仕事はエレベーターガールや案内所にいる、いわゆる“デパートガール” でした。仕事を続けながら、漠然と「何かしたい。もっと自分のためになる事はなんだろう」と思いつつ数年が過ぎ、婦人服の担当に配属したころ、後に“カリスマバイヤー” と呼ばれる藤巻幸夫さん(現・フジマキ・ジャパン副社長、藤巻兄弟社社長、テトラスター社長)に出会いました。上司と部下という立場関係よりも、仕事の仲間としてよく遊んだりもしましたが、それによって様々な方との交流を広げる事ができ、ファッション界って面白い世界だな、ということを感じるようになりましたね。そんな中で出会ったのがデザイナーの卵たちです。素晴らしい才能を持った彼らを世に送り出したいという思いから、藤巻さんらと共に、新人デザイナーを集めた売り場「解放区」を立ち上げ、そこで初めてバイヤーの仕事の楽しさに触れたのです。
  それから10年以上が経ち、念願が叶ってバイヤーという職に就くことが出来ました。努力はもちろんですが、こうなりたい、こう変えたいと常に思って行動していれば、チャンスがきっとやってくる。自然と夢に近づいていくはず。“願えば叶う” が私のモットーです。夢が実現した今、この仕事をいつまでも続けることが新たな夢ですね。そして一人でも多く「バイヤー」という職業に憧れを持ってもらえるような影響力のある存在になっていたいと思います。

プロフィール

すどう ゆきこ
1990年、株式会社伊勢丹に入社。店内案内、販売員、アシスタントバイヤーを経て、2008年にバイヤーへ就任。伊勢丹新宿店の自主編集売り場「Re-Style」「インターナショナルデザイナーズ 」、及びウィメンズディレクターとして、国内外の高感度なファッションブランドのバイイングを担当する。
やまがたよしかず
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