Vol.3 リーズナブルなだけではない!勝ち組ハイバリューブランドの戦略とは?
低価格なだけでは勝てない?
リーズナブルな価格で商品を提供する「ハイバリューブランド」と呼ばれる業態が、昨年末から注目を
集めています。激戦区である原宿では、休日ともなると全国から買い物客が集まり、ショップ前で行列
をなす光景はニュースとしても取り上げられ記憶に新しいところです。とはいえ、不況による消費不振
を受け、国内での出店計画は慎重になる傾向があり、単に価格勝負をするだけでは難しい現状も浮き彫
りとなってきました。
日本上陸以降、快進撃を続けるスウェーデン発H&M
そんな中で、変わらず積極的な出店姿勢を見せるのがH&M(エイチ・アンド・エム)。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ社が展開するハイバリューブランドで、世界34ヵ国で約1,800店舗が展開されています。昨年末の上陸以来、着実にファンを増やし続け、今後は渋谷店を皮切りに新宿、大阪、埼玉への新店オープンを控えています。難しい市況下でのこの快進撃の裏には、どんな戦略があったのでしょうか?同社のPRコミュニケーションマネージャーであるミエ・アントン氏にお話をうかがうなかで、その成功の秘訣が見えてきました。
クオリティと価格のバランス
「ファッションとクオリティを最良の価格で」……。このH&Mのコンセプトは、「トレンド性とファッション性、そして品質のいずれも妥協せず、買いやすい価格でお客様に提供するということを意味している」とアントン氏は語ります。したがって、単に低価格のアイテムを展開するということではなく、一着のアイテムの活用度を高めるということが重視されています。
たとえば、今季のヒットアイテムであるワンピースは、まさに高い活用度を誇るアイテム。昼間はカーディガンを合わせて普段着に、夜はアクセサリーを合わせてドレスアップを、といったふうに幅広く着回しできるという点が人気を集めた要因でした。
そして、商品の魅力をお客様に伝えるプレゼンテーション力の高さも抜群。マネキンでコーディネートを見せるのはもちろん、コーディネートしてほしいアイテム同士を近くに陳列し、店内を巡れば自然と着こなしのイメージが沸くというVMDの手法をとっています。払った金額以上の価値を感じさせるアイテムの展開、そしてそれをわかりやすく訴えかけるプレゼンテーションが、消費者の支持を得るためのもっとも大きな戦略といえるでしょう。
常にお客様に「サプライズ」を
そのブランド力を維持するもう一つの戦略として、「次々に現れるサプライズ」が挙げられます。いつ行っても新たなアイテムと出会える新鮮さに驚かされるのはもちろん、広告では、そのビジュアルのアート性の高さと手頃な価格とのギャップに目を奪われます。
加えて、次々と仕掛けるキャンペーンでもサプライズを提供。デザイナーとのコラボレーションラインでは、ハイブランドを手掛けるデザイナーによるアイテムがH&M価格で展開され、他を凌駕するコストパフォーマンスを感じさせてくれます。また、今季で2回目となる「ファッション・アゲインスト・エイズ」コレクションでは、バーレスク・ダンサーのディータ・ヴォン・ティースや、歌手のシンディ・ローパーといったセレブリティがデザインするアイテムを展開。エイズに対する啓蒙と、対策プロジェクトへの収益の寄付を目的としたその活動で、ファッション界に新たな社会貢献のストーリーを発信しました。
ハイバリューブランドを支える人々
こうした戦略が数あれど、ブランドの成功を支えるのはやはり「人」であることは言うまでもありません。
H&Mでは数多くのアイテムを常に展開しているため、約100名のデザイナーが在席しています。彼らは年に数回「インスピレーショントリップ」と呼ばれる旅行に出かけ、世界各国の若者の文化を肌で感じることで、デザインのインスピレーションを得ていると言います。デザイナー一人ひとりが各地の空気感を持ち帰り、ファッションに落とし込むことから、世界34ヵ国で愛されるアイテムが生まれるのです。
また、社内の人間関係が実にフラットなのも特徴的。社員は全員ファーストネームで呼び合い、話しやすい雰囲気が保たれています。役職をつけて呼ぶことにより生まれる「見えない壁」を取り払うことで、誰もが自由に意見を発する機会を生み、それが柔軟な発想や、スピーディーな情報伝達を可能にしているのでしょう。
これからのアパレル業界をリードする人材
情報が溢れる現代社会では、お客様が商品を選ぶ目は日々厳しく
なっています。その中で活躍できる人材は、アントン氏によれば「日々の変化を楽しめる行動力のある人」。失敗を恐れることなく、そのときベストだと思うことをスピーディーに実行できるという資質は、H&Mのみならず、どのブランドに勤めるうえでも必須だと言えます。
そして、H&Mで活躍したいと願う人へ向け、アントン氏は最後にこんなメッセージもくれました。「若いうちは、いろいろなところに旅をしてください。その地にある自然や食べ物、人々の生活…。さまざまな土地の文化を吸収することが、フレキシブルな発想を生む源になるんです」。








