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STRASBURGO
(ストラスブルゴ)
カランカラン・・・
『いらっしゃいませ。今日は何からにしましょうか?』
『うーん、タンカレートニックで。テンじゃないほうで』
『かしこまりました』
明日は非番。そんな日は、この「ポーゴ」に来るんだ。店名の由来は、マスターが炎を噴くプロレスラーに似てるところから来ているらしい。って書くと凄く怪しい風に聞こえるけど落ち着いた紳士でこの店を人気店に押し上げた名バーテンダーだ。
『どうぞ、ジントニックです』
グイグイ・・・グイ、ぷはぁー。
仕事が終わった開放感からかジントニックを一気に飲み干す。
かすかに柑橘の香りが口と鼻孔に残り、体をリラックスさせてくれる。
『ふぅ、今日も疲れたなぁ。マスターは疲れたりしないの?』
『はは、疲れない人なんていませんよ。次は何をお作りしましょうか?』
『じゃあ、同じやつで』
いつもこんな感じで、何か聞くとはぐらかされるんだ。
でも、今日はなにか雰囲気が違う(いや、いつも変な雰囲気の人なんだけど)から、ちょっと突っ込んで聞いてみようかなぁ。どこかを糸口にいろいろ探ってみよう。
『マスター、STRASBURGO好きなの?』
『えっ、袋田さんこのブランド知ってるですか?』
今までに見たことも無い意外な反応のマスター、これは良いところを突いたようだ。
『もちろん知ってますよ。STRASBURGO(ストラスブルゴ)は、1990年にオープンした最高級ブランドを多く集めたセレクトショップ。特にドレスウェアやビジネスカジュアルの審美眼が評判で、紳士と言えばまずここが挙げられるくらいですよ』
チラッとマスターを見ると笑っているというか、にこやかというか、にやけているような表情が見える。
『へぇー、袋田さん詳しいですね。やっぱり置いてあるものって高いんですか?』
『えぇ、もちろんです。まぁ、当たり前ですけどリーズナブルなものもありますが、だいたい高価格帯という感じでしょうか』
食いついてきた!ここは焦らずゆっくりと。
『マスターみたいな方はよくいらっしゃるようですよ』
『私みたいなの、ですか?』
いい感じだ、ここで少し上げた感じ流れを作る。接客の常套手段だ!
『えぇ、知的な感じでなんていうんですかね、謎めいた感じの人ですかね』
『そういう風に見えますか、私』
『まぁ、あんまり自分のこと話さないからそういう風に見えるのかもしれませんけどね』
『ところで何買ったんですか?』
『あぁ、靴ですよ』
そう言って、マスターはニコッと笑いスッとジンを戻すため移動してしまった。
うーん、さすがの身のこなし方。
『袋田さん、あんまりマスターに靴のこと聞いちゃダメですよ』
『え、なんでまた?』
マスターが棚を整理している時に弟子のバーテンダー斉藤が耳打ちしてきた。
『マスターは靴マニアなんです。一度火が点くと終わりの無い話になりますよ』
『そりゃ、気になるなぁ。俺も一応接客業やってるし、ウンチクがすごいお客さんともよく話すから大丈夫だよ。それに普段寡黙なマスターなら大したことないでしょ』
『そうですか......知りませんよ、袋田さん』
『次は何にします?』
場を離れた時みたいにまたスッとマスターがさっきいた場所に戻ってきた。
『そうだなぁ、やっぱりジントニックで。今度はボンベイ・サファイアで』
『ジントニックお好きですね。かしこまりました』
『......そういえば、マスターって靴好きなんだって?』
『誰から、それを?』
『いや、さっき斉藤クンから聞いたんだよ。意外だねぇ、マスター』
マドラーを持つ手が微かに震えている。明らかに動揺している!よし、まず靴のウンチクを聞いた後、そのままマスターの趣味や家族構成なんかも聞いてみるか。
『いや、俺も意外に好きなんですよ革靴。職業柄いろいろ見たけど、エドワードグリーンやジョンロブはもちろんとして、最近だとガジアーノガーリングとかいいよね』
『そ、そ、そうですね。全部英国靴ですね』
『へぇ、やっぱり詳しいね。普通ブランドだけで英国だってわかんないよ。でも個人的にイタリアも好きなんだよね。ペルーゾとかコスパ良いしね』
明らかに喋りたくてウズウズしてそうだ。
『まぁ、スペインとかもいいしね。マスターはどう思う?』
軽く狙った感じでマスターに投げかけてみた。すると、
『いや、それでですね、私が思うのはやはり革靴というのはイギリスが主流でイタリアは亜流だと思うのですよ。いや、亜流はいい過ぎでやんすね。他にもアメリカなんかはオールデンで最近は盛り上がっているような感じですが、やはりコードバンってのがいけないやんすね。普通はカーフですよ。作りとかはスペインなどもなかなかでやんすが、やっぱり革の調達が下手なとこが多いでやんすね。それに比べてあまり聞かないのがフランスで、なかなかワインのようには行かないでやんすね、げへへ。あー、つまり私の言いたいことはですね○△▲×●.....』
ちょっ!喋りすぎでしょ!!
止まらない本音トークが炸裂し、そのテンションに合わせて手にしたマドラーが超高速ステア状態に。
洗濯機のごとく掻き回されるジントニックを目の前に、俺のマスターへの接客が朝まで続いたことは、後日この店の伝説になった。
- shopper data
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- 縦:240mm
- 横:330mm
- 襠:130mm
- 持ち手長さ:360mm
- 持ち手タイプ:布
- 素材:紙
- カテゴリー:紳士淑女へ




























































