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Balenciaga
(バレンシアガ)
『だますな、ごまかせ!!』
『だますなぁあぁ、ごまかせぇえぇぇ!!!!!』
『私は経費、顧客は利益!!』
『私はぁあぁぁ経費ぃぃい。顧客はぁあっぁ利益きぃぃいい!!』
整然と並んだスーツ姿の屈強なビジネスマン達と一緒に朝礼で俺は声を張り上げている。
今日は、社員研修の一環で他社で1日働く日なんだ。人それぞれ違うけど俺が送られたのは浄水器とイルカ(?)の絵の訪問販売の会社『ウォーターメロン!』。すげぇハイブリットな商材だぜ。
『先週営業1位は、佐々木さん!!』
『はい!!』
『前へ!!』
『はい!!』
さっきからみんなの前でしきっているのは営業統括本部 非常勤課長代理補佐の斉藤さん。課長の代理の補佐ってなんかすごい役職だなぁ。
呼ばれた佐々木さんがタタタタっと音が聞こえるくらいの小走りでみんなの前に立った。
『先週はぁぁ、テレアポ1000件で訪問宅数100軒でした!数をこなせば結果はついてきますぅぅ!今週はぁぁ、テレアポ2000件訪問宅数300軒目指します!!以上です!ありがとうございます!!』
そう言って佐々木さんはまた同じように小走りで列に加わった。
300軒って1日43軒回るってことだよな。24時間仕事しても1軒33分かぁ。すごいな。
『ありがとうございます、佐々木さん!それから今日は、あのパイレーツから研修でいらっしゃっている方がいます!袋田さん!!』
よし!ここで一気に注目を浴びとくか。
『はいぃぃぃいぃいぃいぃぃぃぃぃいい!!!!!!!!』
『ハイは短く!!』
『は、はい!!』
やべー、いきなり怒られちゃったよ。
『自分はぁあ、パイレーツお茶の水店から来ました袋田と申しますぅぅう!!!至らないところもありますがぁぁあ、今日はしっかりとぉぉ勉強させてぇ頂きますぅう!!!!』
パチパチパチではなくザァァァァァァっという豪雨に似た拍手の音が聞こえてくる。
『ここまで教育されているってすごいなぁ!』
そんなことを思いながら俺はまた列に加わった。
『それではぁ、みなさん今日も頑張りましょぉおおぉおぉお!!』
その合図とともにそれぞれが自分の机に戻っていった。
『あ、袋田さん。!』
『どうも!』
『今日袋田さんを担当する山田と言います。よろしくお願いしますね。!』
『あ、こちらこそよろしくお願いします!!』
『そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。!』
『いやー、えへへ!』
今日俺を担当してくれる山田さんがびっくりするくらい美人で少し照れてしまった。
しかし、こんな美人でもガチ体育会系でやっていけるんだなぁ。
『今日はテレアポは無しで直接営業に行きましょう。私がアポを取って置いたので。!』
『え、いいんですか?!』
『やりたいんですか?!』
そう言って山田さんは電話攻勢中の営業部を見た。
『おはようございまぁあぁぁす!瑞々しいメロンと浄水器もしくは超有名な!』
『もしもし〜、それっぽい絵と極上な水っぽい水は欲しくないですか〜?!』
『やばいんだよぉ〜、お願い!話だけでも聞い!』
アポイントメントをとろうと必死の営業マン達が見える。
『いえ、やめておきます。!』
『でしょ?じゃあ、行きましょうか!!』
−そんな会話をした後に10軒ほど訪問。夕焼けがまぶしい時刻になってきた。
『やっぱり売れないなぁ〜。!』
『そうですね。でも山田さんって営業成績かなり良いんですよね?!』
『よく知ってますね!!』
そう、朝礼の挨拶が終わった後トイレに行ったら営業成績の順位が張り出されていてそこに山田さんの名前があったんだ。斉藤さんに次いで2位。
『ま、成績なんて関係ないわよ。目の前の仕事をクリアしていくだけですから。!』
『そうですね。!』
微妙な空気が流れてしまったので、俺は話題を変えようと何かネタを探した。
『山田さんってバレンシアガ好きなんですか?!』
『え、なんでわかるんですか?!』
『その資料入れている袋がバレンシアガだったんで言ってみました。!』
『細かいところ見てるのね。バレンシアガは昔から好きで買ってるんです。!』
『へぇ〜、高いですよね?!』
『そうですね、でも気分が上がるっていうか。!』
さすがは営業成績2位だけあって自分のメンテナンスとかもしっかりやってるんだなぁ。
俺も見習って頑張らないと!
『さ、次で最後なんだから気合いいれていかないとね。次は本気出すわよ!!』
『はい!!』
ピンポーン、ハァーイどなた?とドアの向こうから聞こえてくる。
『ウォーターメロンの山田と申します。!』
『あら〜、待ってたのよ。ささ、上がってください。!』
『いえ、ここで結構です。!』
『いいからいいから、上がってってよ。!』
そう、営業で気づいたことは山田さんは何かを感じた家にはどんなに誘われても相手の家に上がらないんだ。
謎だ。そうこうしているウチに山田さんは営業トークを始めだした。
『いえいえ、ここで結構です。!』
『そう?!』
『今日は、すっごい浄水器と超キュートなイルカの絵をご紹介に上がりました。どちらか興味ありませんか?!』
『えぇ、ちょっと興味ないわね。!』
『皆さんそう言われるんですよ、最初は。でも実物見ると欲しくなりますよ〜。この浄水器、名前はなんとカニアン!!』
『え、えぇ。!』
『あのヨーロッパのほうでエビア○ってありますよね。エビよりもカニですよ時代は!!』
『ごめんなさい、私甲殻アレルギーなのよ。!』
『あぁ、でもご安心を。こちらはアレルギー反応でませんのでじっくり使って頂けますよぉ。!』
『浄水器はもう足りてるのよ。もう3台も設置してるし。!』
『こちらイルカの絵。かわいいでしょ!!』
『えぇ、でも絵はもういいわ。!』
『やっぱりイルカって良いですよね。浄水器とセットで持つと水族館みたいですよ!!』
すげぇ、本気出すとここまで話が噛み合なくなるのか。
『いえ、だからイルカも浄水器も結構です。!』
『まぁまぁ、本当に浄水器とイルカいらないんですか?!』
『ホントに結構です。!』
『浄水器イルカ?なんちゃって。!』
『あら、おかしい!アハハハハハハハハハハハ!!』
もうなんだかわかんないぜ!
『面白かったわ。そうね、買うわ。あなたに負けた。!』
『あざーす!では契約書のほう〜!』
そういって山田さんは急展開で呆気にとられる俺を横目に契約の手続きに入った。
『それでは、今日は有り難うございました。!』
『山田さんに会えてよかったわぁ〜、また近いうちに来てね。!』
『ぜひ!では、今日は失礼します!!』
『さ、会社へ帰りましょう。!』
そう言って、俺たちは来た道をトボトボと歩き始めた。
『山田さん一つ質問いいっすか?!』
『なんですか?!』
『なんで家に上がらないんですか?!』
『そうですね、さっきの家の玄関を見ました?!』
『いえ。!』
『さっきの方は、小さいお子さんと旦那さん、そしておばあちゃんの4人暮らしだわ。靴があったから。そんな幸せなところに私たちが踏み込んでいいのは玄関まで。人の家に上がり込むなんてできないわ。!』
『そ、そんなとこまで見てるんですね!!』
『営業は察する気持ちが大切なの。それができない人は営業なんてできないですよ。最低限のルールを守って、最高の商品を売っていく。それがわれわれウォーターメロン社の営業なの。!』
『す、すみません!俺勘違いしてました!なんか押し売りみたいな感じでやってるのかなって。あの噛み合ない会話も察した故なんですね。!』
『えぇ、やっぱり世界を変えるような商品は初めはなかなか理解されないことが多いの。だからとにかく使って頂いてそれで気づいてもらえるの。でも今日のお客様は深く理解していただいたわ。本当に今日は良い営業でした。袋田さんがいたからかもですね(笑)。!』
なんかトップセールスマンって凄いなって純粋に思ってしまった。柔よく剛を制す。このことなんだなぁ。最高の売り方で最高の商品をお届けする。まさに最高の営業だと思った。
『まぁ、そんなに持ち上げないでくださいね。さ、明日も研修ですよね!明日もがんばりましょう!!』
爽やかな笑顔で山田さんは笑った。
そして、次の日最高の商品が最高の返品方法で会社に帰ってきた。
- shopper data
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- 縦:440mm
- 横:320mm
- 襠:100mm
- 持ち手長さ:360mm
- 持ち手タイプ:紐
- 素材:紙
- カテゴリー:つらい営業のお供に




























































